1975-1984 birth(ver.prototype)

いま発売中の雑誌「ケトル」で、伊賀大介さんが春日太一「あかんやつら」を激賞していまして、その内容と情念に関してはまったくの同意なのですが、そう言えばこの二人って、同じく1977年生まれだよなあと思いまして。何というかまあ、そういう時代が始まり…

「アメトーーク!」でプロレスにちょっと興味を持った人に名著「僕たち、プロレスの味方です」を読んでもらいたいという話

2013年5月23日、テレビ朝日「アメトーーク!」で、「今、プロレスが熱い芸人」が放送されました。まさにいま現在進行形で面白くなり続けているプロレスという現象を取り上げた内容であり、この放送をきっかけとしてプロレスにちょっとだけ興味を持った方もい…

「KAMINOGE」vol.12 前田日明×青木真也対談 〜なぜぼく(とあなた)はこれほどまでに前田日明に魅かれてしまうのか〜

「KAMINOGE」vol.12 Amazon 「KAMINOGE」という雑誌が日本にはある。毎月一回、月末に発行されるこの雑誌は、プロレスラーや格闘家へのインタビューや対談によって、その多くのページが占められている。プロレスや格闘技に興味のない人なら、おそらく手に取…

谷川貞治「平謝り」〜「すみません」という生き方について〜

谷川貞治「平謝り」 Amazon 冒頭から、謝っている。 まずはじめに、ファンの皆さん、並びに関係者の皆さんに深くお詫びします。 谷川貞治「平謝り」は、こうして始まる。サブタイトルは「K-1凋落、本当の理由」。元K-1プロデューサーである谷川貞治氏が、K-1…

園子温「非道に生きる」〜道なき道の上で歳をとるために(32歳編)〜

園子温「非道に生きる」 Amazon 非常に個人的な話で恐縮ですが、しかしまあ、人が文章を綴る以上そこには多かれ少なかれ個人的な事情が介在するものでしょうから、それほど恐縮する必要もないのでしょうし、また実際のところ本当に恐縮しているわけではない…

佐々木俊尚「2011年新聞・テレビ消滅」

佐々木俊尚「2011年新聞・テレビ消滅」 ISBN:4166607081 この辺のことを考えるうえで自分が前提として置いていることが一つあって、それはつまり、金銭と交換可能な全ての商品に対して適正価格っていうのは相対的に決定されるってことなんですよ。たとえば今…

山本弘「アイの物語」

「ヒントぐらいくれ。その候補者に選ばれる資格は何だ?」 「物語の力を知っていること」 「物語の力?」 「フィクションは『しょせんフィクション』じゃないことを知っていること。それは時として真実よりも強く、真実を打ち負かす力があることを」 仮想現…

向田邦子「あ・うん」

向田邦子先生の「あ・うん」を読ませていただいたんですが、何これ? こんなん面白すぎねえ? 何で誰も俺に向田邦子の面白さを伝えてくれなかったわけ? っていうかこれだけ面白いんだったら、お前ら俺に内緒で、全国民一緒になって俺に向田邦子の面白さを気…

行動経済学

友野典男「行動経済学 経済は『感情』で動いている」 ASIN:4334033547 まだ本題まで読み進めていない段階だが、冒頭に書かれていた確率の問題が興味深かったので記す。 設定として、隣の家にお母さんが住んでいる。あなたはその家に子どもが二人いることは知…

陰日向に咲く

劇団ひとり「陰日向に咲く」 ASIN:4344011023 笑いという行為に最も欠かせない概念とは何かといえばそれは対象化である。人、行為や物事、物語を一個の対象として何らかの評価を下すことが出来なければ笑いは生まれず、つまり必死な人は必死なときには笑わな…

エゴイスティックについて

今売ってる週刊SPA!の杉作J太郎さんのインタビューで、後藤真希さんに関する言及。 後藤真希さんがその映画のクライマックスで包丁を持ってキャベツを刻んでたんですよ。僕に言わせれば切るものが違うだろうって……。 (中略) 彼女が映画で刃物を持ったら切…

引っ越し本から抜き書き

今週末に引っ越すことになり、本などもまとめて売るためそれらからいくつか抜き書き。 春日武彦「幸福論」 ASIN:4061497448 「あなたが稼げばいいんじゃないの」 「そのためには身長の問題が……。芸能界だって、僕と背丈が同じなのはタモリだけです」 背が低…

物語の哲学

野家啓一「物語の哲学」 ASIN:4006001398 かくて、文盲をなくす運動は権力による市民の統制の強化と融合する。 これは何となしかっこよろしい。全ての「運動」は魅力的だ。 以後、口承伝承などにおける物語の変化について。 引用された作品は、そこで新たな…

物語の哲学

野家啓一「物語の哲学」 ASIN:4006001398 人間の経験は、一方では身体的習慣や儀式として伝承され、また他方では「物語」として蓄積され語り伝えられる。 「経験」それ自体を伝えること自体もちろん不可能なのであって、例えば「私は昨日カレーを食べた」と…

プレーンソング

保坂和志「プレーンソング」 ASIN:4122036445 何も起こらない話だということは知っていて、そのつもりで読み進めていたら、本当に何も起こらなかった。勿論これは批判などではなくて、そういう小説を意図して書かれたものなのだろうということは、作中「ゴン…

アホの遺伝子

松本修「探偵!ナイトスクープ アホの遺伝子」 ASIN:4591085511 ありえないほどの感動。そして幸福。こんな素晴らしい本を読まないで生きていられるという選択肢自体が信じられない。エキサイティング! そしてロマンチック! 素晴らしいこの世界よ!「新し…

逃亡くそたわけ

絲山秋子「逃亡くそたわけ」 ASIN:4120036146 世の中に「良い笑い」と「悪い笑い」があるとすればこれは間違いなく「良い笑い」であり、とても品が良いなあ、と思う。上品な小説、というわけではない。品には本来上下などなく、あくまでも良し悪しでしか測れ…

社会学を学ぶ

内田隆三「社会学を学ぶ」 ASIN:4480062270 「交叉イトコが優先されるのは平行イトコが除外されるのと同じ理由による」といわれるように、肯定的/否定的な二つの側面は別物ではなく、同じひとつのシステムの作動にもとづいている。 ちょっとかっこいい言葉…

「社会学を学ぶ」

内田隆三「社会学を学ぶ」 ASIN:4480062270 学ぶという行為は極めて個人的な悩みや切実さから要求される(べきだと思う)ものなのだから、誰かが学んでいるという事態は実は相当にスリリングなものなのではないか。たとえその悩みや切実さが当人にしか分かり…

新・それでも作家になりたい人のためのブックガイド

「新・それでも作家になりたい人のためのブックガイド」 ASIN:4872331435 この本が実地的な立場からのアドバイスを目指すものなのであればタイトルは「それでも作家になりたい人のためのブックガイド」ではなく「それでも小説を書きたい人のためのブックガイ…

ラス・マンチャス通信

「ラス・マンチャス通信」平山瑞穂 ASIN:4104722014 こんなわけの分からない話をよくここまで書けるなという感じで、ちょっとすごかった。延々と非現実的な出来事が起き、非現実的な生き物が跋扈しつづけるのだが、しかしそんな中でも だから僕はただ、あな…

サブウェイ

「サブウェイ」山田正紀 ASIN:4894569485 ここは常識的に、どうやって死んだ人に会うのよ、そんなこと知ってるわけないよ、と相手を突っぱねるべきだろう。(略)しかし(略)和美は言う。 物語の恐怖を二つに分類するならば、登場人物の意図によらない恐怖…

アナーキズム

「アナーキズム」浅羽通明 ASIN:4480061746 次いで、明治後期、大本教へ入信してなおの娘婿となり、聖師とされた出口和仁三郎は、大正十年、昭和三年の二回、世の終末=大災害の危機とそれを乗りこえてのユートピア到来を予言する。殊に昭和初期には自ら下生…

奇想小説集

「奇想小説集」山田風太郎 ASIN:4062748630 脾臓が背骨の十三番目のトゲにひッかかると、必ず眼をまわすことは近代医学の承認するところである。 おお、この聖なる真理の使徒に、どうして慾情をおこすことがゆるされようか? 『鼻』のムズがゆさは、尿意だっ…

『論理哲学論考』を読む

「『論理哲学論考』を読む」野矢茂樹 ASIN:488679078X 関数についての問題である。 ある名の定義域に自分自身が含まれている場合に自己言及が生じるわけだが、定義域に含まれているということは、その結果として出力される自己言及文が有意味な命題として値…

『論理哲学論考』を読む

「『論理哲学論考』を読む」野矢茂樹 ASIN:488679078X 一・一改 世界は事実の総体であり、個体、性質、関係の総体ではない。 そこで、現実性から可能性へとジャンプするためには、事実を分解し、新たな再結合の可能性へと備えなければならない。 あるいは、…

フェルマーの最終定理

「フェルマーの最終定理」サイモン・シン(青木薫訳) ASIN:4105393014 ある月曜日の朝、そう、九月の十九日のことです。 偶然にも今日九月十九日とはワイルズがフェルマーの最終定理を修正した記念すべき一日であり、言うなれば「フェルマー記念日」と言え…

ニッポニアニッポン

「ニッポニアニッポン」阿部和重 ASIN:4101377243 俺はトキらの境遇を憐れみ運命の紐帯さえ感じ取って、もう何ヶ月もの間打開策を模索し続け種々の欲求を制御してきたというのに、ユウユウとメイメイはそんなことはお構いなしに交尾に明け暮れていやがった。…

「<美少女>の現代史」

「<美少女>の現代史」ササキバラ・ゴウ ASIN:4061497189 彼女は、とても傷つきやすいからこそ、それを意識してしまった私の前では、もう永遠に傷つけられないのです。 ゆえに美少女は無敵である、という主旨。しかし登場人物がすべて「馬鹿」であればこの…