奇想小説集

「奇想小説集」山田風太郎
ASIN:4062748630

脾臓が背骨の十三番目のトゲにひッかかると、必ず眼をまわすことは近代医学の承認するところである。

おお、この聖なる真理の使徒に、どうして慾情をおこすことがゆるされようか?
『鼻』のムズがゆさは、尿意だった!

 そもそも「陰茎人」という題名自体どうかと思うが、このくだらなさは尋常ではない。もっともそうな顔をして何を言っているんだという話で、心底憧れてしまう。ここまでくだらないことをどんな顔で書いているのだろうか? この圧倒的な真顔感はなんだろうか? いずれにせよ、目指されてしかるべき一つの到達点がここにあるような気はする。まったく読んでいないため批判する立場にはいないのだろうが、しかし「山崎ナオコーラ」という筆名だけ聞いて読む気をなくす人間だっているのだ。それはその小説が面白いのかどうかとはまったく次元の話ではあるが、しかし相当に大事な部分なのではないのか?

村の守護神は「お納戸さま」という女神で、……

 地方の村の閉じられた風習ってのは一個手法として使えるのではないかしら、と思って書いてはみたがそう言えば「花園メリーゴーランド」(柏木ハルコ)がまさにそれだった。