アホの遺伝子

松本修探偵!ナイトスクープ アホの遺伝子」
ASIN:4591085511

 ありえないほどの感動。そして幸福。こんな素晴らしい本を読まないで生きていられるという選択肢自体が信じられない。エキサイティング! そしてロマンチック! 素晴らしいこの世界よ!

「新しいものを作る」という熱望に浮かされた者たちが、そのために努力し、そして報われる話である。さらに現状の「ナイトスクープ」を知っている私たちから見て、それはとてもスリリングな努力だ。テロップという手法の誕生、依頼人がはじめてビデオに登場した瞬間などには、声をあげるほどの興奮がある。さらに過剰なまでにドラマチック!

「石原君? 聞いたことない名前ですが、ずっとスポーツ部ですか?」
「そうや。入社以来、スポーツ部で4年半。よろしく指導してやってくれ」

 完全なる新人の登場!

「松本君、企画案読んだでぇ」
「どうですか?」
「わしの勘は、よう当たるんやけどなぁ」
 山内さんは、楽しげに微笑みながらひと息入れて、
「この番組は、ぜったいヒットするでぇ!」

 良い湯加減の上司!

 歩きながら、みんなが声を上げて高らかに笑った。その明るい笑い声と心の弾みを、私は今もしっかりと覚えている。ある者はチャンスを与えられず、ある者はコンプレックスに悩み、またある者はやる気をなくしていた。しかし今、誰もが手を組み合って、自らの栄光を手にしたいと願っていた。北に向かってのあの愉快な行進こそ、それまでバラバラに生きてきた私たちが、ようやくのこと心を寄せ合い、ひとつの目標に向かって歩みだそうとした最初の姿だった。

 決意への旅!

 全て書いていたら気が狂うほどのドラマチック嵐である。読みながらずっと号泣していた。やれば出来る! 人間、やれば出来るんやで! という、何というか、姿勢について強く感銘を受けざるをえない。「誰もやってないことをやるんや!」というパンク精神と「市井の人々をめっちゃ愛しとるで」というラブ&ピースイズムが最高。大阪!

 感動パートを全て引用するとちょっとあんまりなのでここからはじめて「続きを読む」機能を使用する。これらは全て未来の自分へのための引用であり、この日記を読んでから本を読むと感動半減なのであまり読まないでください! というか一刻もはやくこの本は読まれるべき!

 自分の力を、すごい信じてました。

「一人のディレクターでも、『面白い』と思ったことはやりましょう!」
 初めに「面白い!」と思った根っこは、とても大事なんですね。それをくり返し学んだのが「ナイトスクープ」でした。

 あのころ「ナイトスクープ」がライバルと考える番組は大阪や東京にはなくて、みんなスピルバーグやハリウッドのエンタテインメントを意識して、仕事していましたね。

 目標値の設定に関するプラグマティックな手法。すなわち高すぎる目標値の設定。あるいは、ありえない目標値という手法という考え方もあるだろう。
(例)梶原一騎を目標値に設定した萌え小説

 スタッフに、ムチャを言う人がいないと面白くないということを、経験的につかみましたね。(略)石田さんなんか、ムチャをやってもぜったいうまくいくと信じたはる。
「テレビが取材をやって、信じていたら、奇跡が起きるんや」と。
 ダメになったらどうしようなんて思ってない。うまくいくとしか信じてない。

 最高! 根拠のないミラクル確信最高!

ナイトスクープ的」とは、今までテレビでやっていない、自分らも含めて誰も手を出せていなかったネタで、笑いを取る。それが「ナイトスクープ的」ということなんです。

 依頼者とは思いが一緒であればよいと考えて、一生懸命、あさっての方向に走っていくんです。依頼者の思ってもいない展開になる。(略)カシコは、笑わすときに悪意を持ちますけど、アホは良心的なんですわ。
依頼者が、「そこまでしなくても!」と言うたら、
「何言うてる!」
 と、アホの探偵は怒り出すんです。そこで依頼者の殻が「バーン!」と弾ける。そのとたん、全員アホになってまた走り出すんです。
 カシコには反抗しても、アホには逆らえんところがあるんですね、人間。
 アホて、常に勝ち組ですよね。負けに気づかないですからね。

「新しさ」と「愛」の融合について。あるいは「愛」による笑いについて、つまりは誰を愛するべきか?という問題。「気付き」の笑いなんてもはや試してる場合じゃないという現状。