新・それでも作家になりたい人のためのブックガイド

「新・それでも作家になりたい人のためのブックガイド」
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 この本が実地的な立場からのアドバイスを目指すものなのであればタイトルは「それでも作家になりたい人のためのブックガイド」ではなく「それでも小説を書きたい人のためのブックガイド」であるべきなのだろうが、しかしそれでも「それでも作家になりたい人のためのブックガイド」であるというのは、こういった書籍に金を落とすような人間というのは「小説を書きたい」のではなく「作家になりたい」のだなあと思い、応援しています。そしてこの本が「それでも作家になりたい人のためのアナル性感」ではなく「それでも作家になりたい人のためのブックガイド」なのは、この本はブックガイドなのであってアナル性感などではないからである。
 以下、参考になった箇所。

まず、問題の「幽かな叫び声」の原因をすぐには明らかにしない点が、いかにも奥ゆかしい。一編はそれを六、七ページほどのあいだ宙に吊ったまま…

「なにをこく、この糞ッタレ婆ァ、てめえだちはヒトの稼いだゼニで栄養栄華をして」

この脇役の「勘のよさ」が、いわば読者の分身としての資質に由来する点に、強く着目したい。すなわち、この人物は、夫婦の日記を読みたどっているわれわれと同じ知覚を身に帯びているのである。

近代小説の最大のカノンといっていいのは(略)「彼」が目にし手にしている風景なりちょっとした品物なり、その様子を描くことで、その「悲しみ」を伝えるといった迂回路を導入することだったわけですね。その迂回路が小説の「リアリティ」を保証したりする。