道重さゆみはなぜモーニング娘。史上最も偉大なリーダーなのか、その2 〜あるいは道重さゆみの今後についての提案〜

 まず、このエントリは劔樹人さんの魂のブログを読んでこれは自分もやらなくてはいけないと思って書いているので、まだ読んでいない方がいたらそのブログを読んでからでお願いします。

 あなたに会えてよかった(一方的な意味で)。|劔樹人の渋谷陶芸教室

 前回は「その1」として「道重さゆみは、ヲタが戻るときに、まだモーニング娘。に在籍していた」ということに書きました。その記事はこちらです。今日はその続きです。それでは。

<その2:道重さゆみは、ヲタが入れ込むためのツールを自分の努力で創った>

 前回のエントリでも、ハロヲタをやめてしまった人について書いたわけですが、そこには色んな要素が理由としてあって。推しの卒業とか、楽曲の微妙さとか、つんく♂さんが地球の平和とかお米のおいしさとかを言い出すとか、まあ色々ありますよ。でも実は、一番大きかったのっていま振り返ると、テレビ東京ハロー!モーニング」の放送が終了した、っていうのが実は一番大きかったんじゃないかって気がするんです。意外と。

 テレビ東京ハロー!モーニング」は2007年4月1日の放送をもって最終回を迎えるわけですが、シングルでいうとその直前に出た曲が「笑顔YESヌード」で、これが光井愛佳さんの初参加シングル。その後、「悲しみトワイライト」「女に 幸あれ」(ジュンジュン・リンリンが初参加)「みかん」と続いていくわけですが、メンバーがどうこうっていうことじゃなく、ここで離れたファンは多いんじゃないかと思うんです。もちろんそのだいぶ前から「もうヲタじゃない」って思った人でも、そこまでの曲ってなんとなく記憶にあったりするんですよね。

 で、何で「ハロー!モーニング」の終了が悪い意味で重要だったのか。っていうのは「ハロー!モーニング」って、新しいメンバーが入ってくるとき、そのメンバーがどういうキャラクターかっていうのをちゃんと教えてくれてたんですよね。6期で言うと、エリザベスキャメイとかで、ああこの子はエリザベスな感じの子なんだな、っていうのが分かるように作られていた。コントもそうです。亀井さんは幸薄い子なんだと。ここまで出演者のことをちゃんと考えたテレビ番組ってあまりなくて、ライトなヲタだったとしても、その子の取扱説明書になってたと思うんですよ、「ハロー!モーニング」って。

 で、その番組が2007年4月1日で終了するんですけど、そうすると、そこから入ってきたメンバーのことがよく分からないんですよね。その人がどういう人なのかとか、どういうキャラクターなのかとか、どう見るのが正解なのか、っていうのが。勿論コンサートに行けば分かるのでしょう。パフォーマンスも凄いに決まってる。でも、そこまでのハードルって意外と高いんですよ。アイドルは素を見せない仕事っていうのはよく言われますけど、キャラクターは見せてくれないと推せないわけです。どう見れば良いのかが分からないものを愛することって、やっぱり難しいんですよね。見れば分かる、っていうのは当然知ってても、そこの一歩が踏み出せない。だから、メンバーのキャラクターが分からなくなったこの時点で足が遠のいてしまった人って、結構少なくないんじゃないかと思うんです。

 特にモーニング娘。っていうのは、テレビとともに誕生してテレビとともに歩んできたからこそ、「ハロー!モーニング」の放送が終わったっていうのはかなり大きいんじゃないかと。そこにはハロー!プロジェクトっていう連合体の特殊さもあると思うのですが。自分はメロン記念日のヲタであり、当時も娘。のヲタではなかったんですけど、ハロー!が好きっていうのはあって。だからやってりゃ何となく見てたんですよね、「ハロー!モーニング」は。それでなんとなく追いついていた。でもそういう媒体がなくなったことで、自分みたいなグレーゾーンのヲタは着いて行くのをやめちゃったんだと思うんですよ。それぞれのキャラクターが分からないから。

 だけどいま、2013年から2014年にかけて、かつてのヲタが戻りつつある。それの基盤にあるものは何かっていうと、現メンバーのポテンシャル、可愛さ、フォーメーションダンス、どこにも負けてないパフォーマンスの力。全部が後押しになっています。でも、実はそれって、個々のキャラクターを見せるっていうことに対しては別に有効ではなくて。じゃあ何でかつてのヲタが戻ってるのか? それは、ブログなんです。たぶん。モーニング娘。が全員ブログをやっているという、これは大きい。しかも道重さゆみ/9期/10期と11期、っていう分け方も素晴らしい。全員個別にやっちゃうと、単推しから拡がらないですからね。この、横に繋げる形式っていうのは非常に大きい意味を持っていると思うんです。

 で、言ってしまえば、アイドルは素を見せないっていう前提がある以上、ブログを書くべきか否かっていうのは大きな問題なわけですよ。ブログっていうのはアイドルとしての一次情報を呈示するってことなので、そこでヲタが失望する可能性もおおいにあるわけで。リスクもあるんです。でも今や、モーニング娘。にとって、ブログっていう媒体はなくてはならないものになっている。それを誰が創ったのか。ご存知の方は当然ご存知だと思いますが、ハロー!プロジェクトの数多くのメンバーの中で、ブログをやりたいって言い出して、それを実現したのは、道重さゆみさんなんですよね。

 たぶん動画共有サイトで探せばあると思うんですけど、道重さゆみさんは当時色々悩んで、考えて、自分の考えを出す場が欲しいっていう気持ちで、事務所にブログをやらせてほしいって頼んだそうですよ。で、何度も駄目だって言われたらしくて。それでも何度も、何度も、それを懇願して、ようやく了解を得て。その時点ですごいなって思いますけどね。でも道重さゆみさんはそこだけは曲げなくて。それでようやく、自分の思っていることを表明する場所を、自らの努力によって勝ち得たわけです。

 このときの道重さゆみさんの努力と信念は、本当に何年経っても語り継がれるべき革命だと思うんですよ。それまでのアイドルっていうのは、事務所に守られていたし、程度の差はあれ事務所の力学の下に置かれていたわけですが、そこを覆したのは道重さゆみさんが起こした革命と言っても良い。それで、素をぶっちゃけるわけじゃなく、ファンの望む理想を理解しながら、そのうえで遊んでもらうっていう楽しみ方を、彼女は創ったんですよね。非常に高いリテラシーがあるから出来ることなんですが、それが自分には出来るって、道重さゆみさんは分かってたんだと思うんです。そして真の意味での革命というのは、一度起きたらそれがスタンダードになるので、そのイズムが9期以降にも引き継がれているわけですよ。

 道重さゆみさんは、自らの努力によってブログを創ることで「アイドル」という単語を主語にしたってことです、つまり。これは間違いなく、アイドルという歴史に刻まれるべき大いなる革命です。そして、彼女の背中を見ている9期以降は、その革命を完璧なまでに受け継いでいて。全員がそれぞれの個性を出しつつ、本当にちゃんと考えてブログを書いている。そしてそれが個々のキャラクターとして我々に認識される。ヲタはその行間を選び取り、そのキャラクターをカルチャライズして遊ぶわけです。そういう幸福な共犯関係が現在の娘。にはあって、それを創ったのは間違いなく、道重さゆみさんその人なんです。

 というわけで、道重さゆみさんについての話は、まだまだ続きます。