M-1グランプリ無差別級レポ

 M-1グランプリの「コンビ結成10年以内」という制約をとっぱらった完全ガチの大会、言わばM-1グランプリ無差別級が行なわれたらどうなるかと思いを巡らせた結果いてもたってもいられなくなったため、以下にそのレポを記す。なお審査員による採点なども完全ガチで行なったものであり、苦情などある方は審査員当人まで言っていただきたい。

 出場者:
 大木こだま・ひびきオール阪神・巨人くりぃむしちゅー昭和のいる・こいるダウンタウン千原兄弟爆笑問題宮川大助・花子(50音順。以上8組に加え、敗者復活組から1組を選出)

 審査員:
 島田紳介大竹まこと島田洋七喜味こいし西川のりお萩本欽一中田カウス

 抽選:
 厳正なる抽選の結果、トップバッターはダウンタウンに決定。松本が1番のボールを引いた瞬間、会場内に大きなどよめきが起きる。以下順に、阪神巨人、くりぃむ、爆笑、のいるこいる、こだまひびき、千原、大花。トリを務めることになった大助・花子の大助は、深刻な顔で何度も大きくうなずいた。

 決勝一回戦:

 ダウンタウン
 誘拐ネタ。かつて漫才の歴史を変えたとまで言われる伝説的なネタだが、ボケのパターンは完全に一新。もはや同じネタとは思えないほど変化をとげた漫才は、観客の心を一気につかむ。ところどころ浜田が松本を自由に泳がせ、アドリブでボケさせる場面も。即興漫才のひとつの完成形を見せつけた。

 オール阪神・巨人
 子ども手当て問題を軸に時事ネタ。ダウンタウンの漫才の中で松本のオーソドックスなボケに対し「阪神・巨人か!」という浜田のツッコミがあったのだが、そのためかあまりにもオーソドックスな漫才に見えすぎてしまった。阪神「♪車にポピー」から「♪オートバックス」までの流れでは観客を湧かせた。

 くりぃむしちゅー
 オレオレ詐欺ネタ。多くの漫才で用いられたオレオレ詐欺ネタではあるが、その中でも白眉の出来。有田ならではの適当なボケが、この日のために丸坊主にしてきた上田のツッコミにより一層光る。「オレオレ」と言う声が異常に甲高い、という単純なボケでここまで爆笑をとれるコンビは彼ら以外にはいないだろう。

 爆笑問題
 時事総括ネタから流れての近未来予想。完璧としか言い様がない出色の出来であった。時事トピックスの全てで確実にひとつは爆笑をとり、さらにそのネタの全てが後半の近未来予想で有機的に結合していくさまは、見ていて感動すらおぼえた。トチリも一つもなし。ネタ終わりで頭を深く下げた太田に明らかな後光がさしていた。

(爆笑の高得点に会場がどよめく中、敗者復活戦の優勝者が決定。過去のM-1優勝者が全て参戦する中、彼らを制して決勝に進んだのはツービート。藤井隆が向けるマイクに対し照れ笑いするたけしが「今回のネタはよ、全部水道橋が作ったんだ。弱っちゃうナ」と暴露。号泣する玉袋筋太郎がカメラに見切れる。ツービートはキッドとともに会場へ)

 昭和のいる・こいる
 なんとオレオレ詐欺ネタ。くりぃむしちゅーと完全にネタ被りしているにも関わらず「面倒くさいからいいや」とそのままネタを変えずに挑むあたりさすがにベテランである。だがあの動きで「オレオレオレオレ」と連呼されるとさすがに爆笑。のいる・こいるならではの、いい意味で後に残らない漫才だった。

 大木こだま・ひびき
 子どもの教育ネタ。例によって、そんな奴おるか、の連呼。例によっていつものこだま・ひびきならではの笑いを追求しながらも、こだまが生まれたての赤ん坊に扮するなどの新境地も見せる。のいる・こいるが完全に崩した雰囲気をうまくまとめて笑いに昇華させる「味」はさすがの一言。

 千原兄弟
 ポエムネタ。Jr.がポエムを読み、お兄ちゃんが独り言のようにつっこむといういかにも千原兄弟らしいネタだったが、いかんせん笑いの量が少ない。徐々にポエムが物語になるなどネタとしては非常に素晴らしいものだったが、漫才としての評価は上がらず。もっともそこも千原兄弟らしいと言えるかもしれない。

 宮川大助・花子
 自叙伝ネタ。花子が生まれてから今に至るまでの半生を漫才にして見せるという、トリにふさわしいネタであった。特に花子が大助と出会ったときと、結婚前夜のくだりは秀逸。何度も大助を上げては落とし、そのたびにボケの強度が増すさまは鬼気せまるものがあった。見事な職人芸。

 ツービート:
 エンタツアチャコからやすきよ、さらにはかつての漫才ブームの漫才師に対して次々に毒を吐いていくという前代未聞のメタ漫才。水道橋博士が作ったネタということもありたけしが何度もネタを飛ばすが、それが逆に味になっている。弱い者が強い者を叩く、というツービート漫才が立ち位置を芸の世界に置くことで蘇った秀作。見事。

 決勝一回戦の結果、最終決戦にコマを進めたのは爆笑問題(682点)、ツービート(681点)、ダウンタウン(667点)の三者。なお4位以下は、同率4位でくりぃむしちゅー大木こだま・ひびき(658点)、6位宮川大助・花子(655点)、7位昭和のいる・こいる(652点)、8位オール阪神・巨人(647点)、9位千原兄弟(619点)という結果となった。抽選の結果最終決戦は、爆笑問題、ツービート、ダウンタウンの順で行なわれることに。果たして優勝の行方は誰の手に!?

 と、実はここまで2〜3年前ぐらいに書いてたんですが(「オレオレ詐欺」とか微妙に古いのはそのせいです)、最終決戦がどうなるのかが一切書けず、しかしまあ、この三組の優劣なんてつけられんだろと思いますので、このまま上げます。この先は各自妄想してください。