給与明細

 テレビ東京「給与明細」にて。

 潜入!デリバリーメイドサービス

 切なすぎる。何が切ないって、客とメイドに恋が生まれてしまいそう感が切なすぎる。それは確実に生まれない恋である。にも関わらず、その部屋の空気は雰囲気は、明らかに恋が生まれる直前のそれなのである。これは切ない。そしてその空気に乗ってしまいそうな客を見るのが切ない。彼はまったく悪くない。この物語に悪人は登場せず、ただ唯一、恋が生まれそう感を抱かせる空気だけが悪いのだ。

 なぜ恋が生まれてしまいそうなのかと言えば、それはやはり「演じる」という行為のもつ魔力だ。メイドのご主人様は、恋をしてしかるべき関係にある。それが物語としての理想型なのだ。だからデリバリー嬢がメイドに扮したときその理想型を持つ物語が生まれ、そしてそれはメイドを「演じる」という行為によって生まれるものなのである。

「演じる」という行為は恋において非常に重要な価値をもつ。モーニング娘。メロン記念日美勇伝………。それらの名前が明確に奇妙であることはまったく偶然などではない。女の子たちは、まずそこで演じるのだ。自分が「メロン記念日」という素っ頓狂な名前をもつユニットの一員である、という時点ですでに演じなくてはならない。普通の女の子がステージに立つ上でその決意とは非常に意義深いものであり、ユニット名の馬鹿馬鹿しさは単につんく♂の気まぐれではないように思う。

 そして「ご主人様」という語のもつくだらなさ、馬鹿馬鹿しさを誰が無視しえよう?

(例)ご主人様ゲーム。当たりくじを引いた人間だけが、しばらく「ご主人様」と呼ばれる。参加者は全員男。