「みっつ数えろ」第二戦・解説 〜プロレス用語解説シリーズ〜

 本日2013年8月10日、有料メールマガジン水道橋博士のメルマ旬報」にて拙作「みっつ数えろ」の連載第二回が配信されました。みなさまお読みいただけましたでしょうか。2年半前に自分が書いたものをちょこちょこリライトしたのが今回までの連載なのですが、正直ぐっと来ちゃいましたよ、恥ずかし気もなく。いや本当、この先の展開も楽しみですよね、ってまあこれで見事にストックを使い切ってるっていう非常に恐ろしい現実はさて置いてますけどもね。ここからどういう話になるのか、書いてる当人がまったく分かっていないという。とは言えまあ、人生とかプロレスとかって大体そういうものなので、どうにかなるんじゃないでしょうかおそらくは。どうにもならなかったら、そのときはそのときということで。

 さて、そんなわけで本日は「みっつ数えろ」第一戦と第二戦で出てきたいわゆるプロレス用語について解説してみます。本日配信の「みっつ数えろ」を読んでいないとまるっきり意味が分からないエントリになりますので、ご購読はこちらのページからお願いします。「みっつ数えろ」とはざっくり言うと「女子高生がプロレス部を設立しようとするが、危険すぎるという理由で学校から却下され、その代わりに演劇部を設立して演劇だと言い張りながらプロレスを行う」というお話のマンガ原作です。プロレスを知らない人でも楽しめるようなわりと真っすぐな青春ストーリーとして書いてるつもりですが、そうでもなかったら申し訳ございませんということで、何卒。

 以下、第一戦と第二戦で出てきたプロレス用語についての解説です。「みっつ数えろ」は、プロレスを知らない人がプロレスに興味を持ってくれたら良いなあというのを一番の目的として書いていますので、そういう方に向けて。もちろん知ってても知らなくても社会生活を送る上で何の支障もない情報なわけですが、知識は荷物になりませんということで、お耳汚しさせてください。プロレスを好きな方には言わずもがななところもありますが、まあまあ、それはそれということで。

 それでは。

 第一戦:「迷わず行けよ 行けば分かるさ」
 暁星あゆみが自ら書いている「暁星あゆみ自伝」の1ページに書かれているこのフレーズは、言わずと知れた「燃える闘魂」こと現・参議院議員アントニオ猪木が現役引退試合(1998年4月4日)のスピーチで遺した言葉。あゆみはアントニオ猪木を崇拝するあまり、アントニオ猪木と同じように「自伝」を自ら書いているという設定。ちなみに小林まこと「1・2の三四郎」の主人公である東三四郎も作中であゆみ同様、自らの手で「自伝」を書いており、アントニオ猪木信者は全員「自伝」を書いているであろうことが伺えます。

 第一戦:「海賊男」
 神社で瞳を見つけたあゆみは、瞳のことを「乱入」してきたものだと早合点し、「海賊男めぇ〜」と発言。この「海賊男」というのは1987年に新日本プロレスに登場した謎の覆面レスラーのこと。大阪大会、メインのアントニオ猪木マサ斉藤戦に乱入し、マサ斉藤に手錠をかけて連れ去るも、そのあまりの意味不明っぷりに観客による暴動が勃発。黒歴史を残すとともに、忘れようにも忘れられないほどのインパクトを与えた「乱入」の代名詞的存在。動画サイトに上がっている当時の映像を観ると、本当にわけが分からなすぎてわりと吃驚します。

 第一戦:「リングアウトしないための練習」
 プロレスの試合における勝敗の付け方は、ピンフォール、ギブアップ、ノックアウトなどいくつか存在するが、リングアウトというのもその中のひとつ。リングの外に落ちた選手が決められたカウントでリング内に戻ってこないと負けが宣告されるというルールのこと。両方の選手がリングに戻ってこれないときは、両リン(両者リングアウト、の略)と呼ばれ、その試合の勝敗はつかない。リングアウトで勝敗が決まるカウントは、全日本プロレスが10カウント、そのほかの多くの団体は20カウント。「みっつ数えろ」では、本編でも描かれているように、20カウント方式を取り入れている。
 リングアウト決着、特に両リンは不透明決着というイメージが強いので、あゆみはそうならないための練習をしているという意味合い。基本的には脚力を鍛えるトレーニングで、やり方としては「すごい離れたところでうつぶせになって、カウントテンで起き上がって神社のリングに走って戻ってくる」というわりとアバウトなスタイルを採用。発案者はあゆみで、当初は「まず失神するところから始める」というハードコアなものを考えていたが、みやびの反対により現状の形に。

 第一戦:「はぐれ国際軍団時代のラッシャー木村
 ラッシャー木村とは、大相撲を廃業後、日本プロレスから東京プロレス国際プロレスなど、数々の団体を渡り歩いたプロレスラー(故人)のこと。国際プロレス解散後、残党とともに悪役ユニット「はぐれ国際軍団」として新日本プロレスに参戦し、試合のみならずその生き様を含めて「プロレス」の何たるかをファンに伝える。その後は第一次UWF参戦を経て、全日本プロレスに参戦。明るく楽しいプロレスを繰り広げた。マイクパフォーマンスの「こんばんは、ラッシャー木村です」という一言も有名で、これはたぶんいつかネタに使いそうな気がします。何となく。

 第二戦:「ミスター・ウォーリーのコスプレ」
 ミスター・ウォーリーというのはアントニオ猪木が現役引退後(独自の団体であるUFOを設立、運営していた時代。1998年7月ごろ)に一瞬だけ、というかおそらく一度だけ名乗った、謎のコスプレキャラクターのこと。テンガロンハットにサングラス、付け髭というコスプレをして空港で待ち構える記者の前に現れたものの、そのアゴの長さと体つきは明らかにアントニオ猪木その人でしかなかったため、プロレスマスコミとプロレスファンはどう対応すべきか非常に困惑した。あゆみは年齢的に当然リアルタイムで経験しているわけではありませんが、当時の「週刊ファイト」は中学生時代に後追いで全号読破しているので、ミスター・ウォーリーの存在は知っているという設定。

 第二戦:「新生・全日本の諏訪魔選手がラストライド決めたあと式の体固め」
 この回の「みっつ数えろ」ではオーソドックスなピンフォールの技として「片エビ固め」を採用しているが、ピンフォールに至るまでの必殺技によっては「片エビ固め」に移行しない場合ももちろん多々ある。その一例として、諏訪魔選手がラストライドという必殺技を決めたあとは、相手に覆いかぶさって堂々とレフェリーのスリーカウントを聞く。あれはもう、絶対に返せない。ブルース・リーが敵を踏みつけたあとのようなどこか哀しい表情を浮かべる、その色気が凄まじいので未見の方は是非とも会場に足を運ぶべきだと思います。


 プロレスファンの方が読まれると「その解説違うわ!」ってなりそうな気がして戦々恐々なのですが、ざっくりこんな感じです。そんなに難しいこともないですし、「みっつ数えろ」はこの辺の細かいところは知らなきゃ知らないでそれはそれというか、ああなんかこれは何かしらのプロレス用語なのね?ぐらいで読み進めるようには書いておりますので、まあまあまあ、適当な湯加減で適度に読み進めていただければと思っております。知ったら知ったで面白いので、それはそれで、ということで。

「みっつ数えろ」、まだ「水道橋博士のメルマ旬報」読んでない方で興味もっていただいたなら、ご購読はどうぞこちらのページから。以上、「みっつ数えろ」第二戦の、お粗末ながら解説でした。また次回!