アイドルとプロレスとサブカルと天皇

 結局誰しもが求められるために生きていると言っても過言ではないですよ、仕事にせよ生活にせよ。自分が好きだからこれをやってるんだって素面で言い続けられるほど強い人間っていうのはそんなに多くはなくて、だから人は子どもを生むのだし、島耕作に憧れるのだし、派遣村のニュースに対して同情するのだし、だって派遣村なんてあんなの貴族みたいなもんじゃないですか? パンがなければ派遣村に行けばいいのに、って言説は決して皮肉ではないと思うんです。人はたぶん求められるためだけに生きている。自分がどうしたいとか、本当の自分はどうだとかっていうのはそのおまけみたいなものじゃないのか。

 アイドルファンもプロレスファンも、たぶん同じにおいがするのは、もしくは本気で気持ち悪くて友達になりたくないって人ばっかりがその場に集まるのは偶然ではなくて、観客としての視線が求められているジャンルであるが故の必然でありましょう。アイドルも、プロレスも、起こっている事象は観客の視線があってはじめてジャンルとなる。不倫みたいなもんですよ。本妻は社会。社会という本妻に隠れて楽しむ秘め事ですよ。もしくはメンヘル同士の心と心のふれあいが、アイドルであり、プロレスだって言ってしまったっていい。

 アイドルも、プロレスも、天皇も、ユーザーの視点があって初めてエンタテインメントのジャンルとなっている。ちょっと昔のロッキンオンジャパンとか、ずいぶん昔のガロとかだって、そんなのひとくくりにしたって良いでしょう? 「俺」や「私」が求められている。自分が求められるために、愛しているふりをしてたんだ。だから不倫なんですよ。本当に愛しているかどうかなんてどうでもいい話であって、心中が物語として望まれているのであればいつだって玉川上水に身を投げるってのが人のあるべき姿なんじゃないのか?

 それでも人は、心中を求められることなんてそんなに多くはないのだから、やっぱりどうしたって生きていかなくてはいけない。だから人生っていうのは想像以上にヘビーだし、人って結構みんなものすごく頑張っているんだよね。やってらんねえよ、って感じもあるし、やってやるよ、って感じでもあるし。その辺全部含めてやってらんねえよ、って感じもあるし、やってやるよ、って感じでもあるし。やってらんねえのか? やってやるのか? たぶんどっちだって一緒だよ。いずれにせよ生きてかなきゃいけないんだから、結局のところ人生なんて最悪だし、意外とそうでもないかもしれないし、もう小難しいことなんてなんでもいいよ、誰でも良いから俺と心中してくれないか?