マンガアワード2006

 年末であるし、訃報も続くし、気分が落ちそうなときはマンガがあればいいのではないかと思うので、マンガアワードを自分の中で開催しましたのでその結果をお知らせします。マンガアワードとは、要は好きなマンガをみんなが言い合うという会なので、それぞれが好きなようにベスト5でも決めればいいのではないか。俺はマンガについて語りたいからマンガについて語るだけですよ! そんなわけで西暦2006年の、相沢の中でのマンガベスト5を発表したい!

第1位
福本信行「最強伝説黒沢

 2000飛んでゼロ年代のマンガは黒沢に始まって黒沢に終わった、と言っていいほどの衝撃だった。アジフライ事件での衝撃、こんなニッチな話を商業誌のマンガとして成立させたっていうのは確かに福本先生の<革命>だったわけだが、その後お家芸とも言える中だるみを経て、しかし福本先生はまたもや最終回で黒沢を甦らせた。黒沢はあのラストシーンによって甦った。キャラクターは命に依存しない。マンガだけがなし得る素晴らしきエンタテインメントが、この最終回には確かにあった。
 相沢はこの最終回を連載で読んだのだが、表紙から本編に至るまで一切最終回であるということを強調せず、こっそりと、しかし唐突に、ほとんど暴力的にあのラストシーンを提示してくれた小学館に感謝したい。マジであんな終わり方になるなんて、というか終わるなんてまったく予想していなかった。だって21世紀のマンガで、主人公が星になって終わるなんてそんな最終回あるか? あるのだ。それは福本信行先生が描いた「最強伝説黒沢」というマンガである。この時代に生まれたことに感謝したい。マンガってのは、だからやめられないのだ!

第2位
信濃川日出雄「fine.」

 週刊ビッグコミックスピリッツで連載され、来週でいよいよ最終回を迎えるこのマンガがすごかったのは、最初から最後まで全てが間違っているところだ。アートや自意識という題材をあつかって、痛い話になるマンガってのはないわけじゃない。しかしそういうマンガだって、大抵はどこかに共感できる部分がある。しかしこの恐るべき「fine.」というマンガは、一切共感できる部分がないという意味において相沢のマンガ読み史に大きな足跡を残していった。
 全ての登場人物が、全てにおいて間違っている。全ての台詞が間違っている。それはもう、笑うしかない。たぶん死ぬまで一生読み返さないだろうと思うし、この笑いはこのマンガに酔っぱらっているからなのかもしれないし、他人に薦めようなんてこれっぽっちも思えないしょうもない、心底しょうもないカストリマンガだと思うが、しかし相沢の2006年は「fine.」とともにあった。「サイトウ……描くよ、君を」という馬鹿みたいなセリフにあれだけ笑えることなんてそうはないだろう。これは誉めているわけではなく、単純にけなしている。でもそういうマンガっていうのを読めるのは、本当に幸せなことだと思う。歴史的なクズマンガだった。幸あれ!

第3位
花沢健吾「ボーイズオンザラン」

「fine.」と同時期に同じ雑誌で連載されていたっていう事実は、後世の人々からしたら相当不思議なことになるのではないか。このマンガは本当に面白いので、全ての人に読んでほしいと願う。田西がケンカしに行くところなんて、もう毎週月曜日が楽しみで仕方なくて、たぶん昭和のマンガ好きがあしたのジョー少年マガジンで読む気持ちってのはああいう気持ちだったんだろう。そのときぼくは田西だったし、田西はぼく自身だった。それはなんて素敵なことなんだろう? 田西っていう童貞の気持ち悪いヲタ野郎と幸運にもマンガを通じて知り合えたことを、心から誇りに思う。彼は本当にいいやつだ。ぜひ君にも紹介したいんだがどうだろうか?
 本当に、田西はいいやつだ。今はボクサーを目指しているが、きっとずっとかっこ悪いだろう。それでも田西はたぶん不格好に走り続けて、だからぼくらも、不格好でいいから走ることができる。田西がかっこ悪いぶん、ぼくらもかっこ悪くいることを許される。最高だ! もし実写化されるとしたら、金髪の女の子は若いころの後藤真希さんでお願いしたいと思います。後藤真希さんっていうのもこれがまた最高の女の子なんだが、その話をすると長くなりそうだから別の機会をもうけよう。

第4位
真鍋昌平闇金ウシジマくん

 あんなに怖い顔の人間ばっかり出てくるマンガ知らねえよ。全員が全員狂ってて、正気の人間なんて出てきやしない。実際、この世界ってのはそうなんだろうか? 誰もが主観的な人生を生きていて、それがたまたま金をゲットして笑顔になったり、追いつめられて気が狂ったり、ってそれだけの話なのだろうか? とにかく怖い。義務教育でこのマンガを読ませれば、金にまつわる犯罪が減るのではないかとは言わないが、もうちょっとみんな頭を使うようになるのではないか。最後に気が狂って宗教にはまる覚醒剤の女の絵が本当に怖い。あれは子どもに見せたら夢に出るだろう。

第5位
東村 アキコ「ひまわりっ健一レジェンド〜」

 宮崎を舞台にしたギャグマンガであり、相沢は宮崎県生まれであるからこのマンガは是非推しておきたい。勿論それだけではなくていちいち細かいところが素敵すぎて俺はこのマンガの中に住みたいと思った。全ての登場人物が可愛い、っていうのは異常である。ケンイチの部下の黒木さんがカワユスすぎる。ちなみに宮崎県には何故か「黒木」という性の人間が多いのであった。

 次点はビッグコミックオリジナルで連載中の「風の大地」。こんなん去年までは完全に飛ばす勢いのマンガだったのに、ものすごいことになっててやばい。ゴルフを始めようかと思うぐらいの凄みがある。あるマンガがいきなり無茶苦茶面白くなるっていう現象は少なからずあるが、「風の大地」は今年まさにそのゾーンに足を踏み入れたのではないか。今後も期待します。

 あとマンガじゃないところで言うと、週刊モーニングで連載してる竹田聡一郎の「ビーサン!!」っていうサッカー旅コラムは本当に面白いのでオススメ! シニカルでユーモラスでなおかつリリカルで、要は愛にあふれてるフットボールへの目線が素晴らしい。この連載はもっと評価されるべきだと思う。やっぱ人前に提供されるものってのは愛であるべきだし、愛であったら何だっていいんじゃねえの?

 というわけで相沢のマンガアワードの発表はこれにて幕を閉じる。みんなもマンガが好きならマンガについて語ったら良いのではないか。というか語ってください。俺は読みたい。コメントをくれても良いし、トラックバックを貼ってくれても良いが、君たちはそろそろマンガについて真剣に語ってくれて良いと思う! マンガアワードに幸あれ!