「みっつ数えろ」第七戦解説 〜プロレス用語解説シリーズ〜

 2013年11月25日、有料メールマガジン水道橋博士のメルマ旬報」にて拙作「みっつ数えろ」の連載第七戦が配信されました。みなさまお読みいただけましたでしょうか。今回は「みっつ数えろ」第4のメンバー、源五郎丸めぐみ選手の紹介というか、普段は強気な彼女が背負っているものについて書いてみました。仲の良い「演劇部」の三人の練習風景と、孤独を甘んじて受けるめぐみの対比っていう、これはもうテクニックですよね。オーソドックスなレスリング技術を駆使してね。で、またそこでめぐみの執事の西園寺が、良い仕事するなー、っていう。いやもうね、「みっつ数えろ」、すっごい好きだわ、俺。

 さてここからは、本日配信の「みっつ数えろ」を読んでいないとまるっきり意味が分からないエントリになりますので、ご購読はこちらのページからお願いします。「みっつ数えろ」とはざっくり言うと「女子高生がプロレス部を設立しようとするが、危険すぎるという理由で学校から却下され、その代わりに演劇部を設立して演劇だと言い張りながらプロレスを行う」というお話のマンガ原作です。プロレスを知らない人でも楽しめるようなわりと真っすぐな青春ストーリーとして書いてるつもりですが、そうでもなかったら申し訳ございませんということで、何卒。

 で、今回は色々とプロレス用語というか、プロレスを全然知らない人にとってはよく分からないことが沢山出てきてしまったので、その辺りを解説させていただきます。

【みやび「(略)場外乱闘のときにお客さんを守るのも、プロレスラーの大事な仕事だぞー」】

 プロレスの興行において、場外乱闘、つまり観客席にプロレスラー同志がなだれ込んでそこで殴り合いを始めるということはよくあるのですが、そういった際、お客さんを守るのはその試合とは関係のないプロレスラーだったりします。プロレスラーはとても強いので、お客さんを守るためには身を呈する必要がある。それが出来るのはプロレスラーだけです。普段から鍛えていて、攻撃に耐えられなくては、お客さんを守ることが出来ないのです。

 プロレスを好きになると、そういう、リング外でのプロレスラーの動きをよく見るようになりますし、そこで全力を出している選手のことを好きになる。場外乱闘が始まった瞬間、会場全体に目をやり、誰がどう動くのかを気にするようになります。今回、札幌プロレスフェスタの話が出てきてますが、自分は現場で観戦していまして(プロレスを観るためだけに北海道に行ったのですが)、そこでの関根龍一選手とマサ高梨選手が本当にかっこよかったのでまた好きになってしまいました。場外乱闘が始まった瞬間、駆け出すあの男の様は実に良いものです。その場にいる全員が興行を良くしようと思っているから、プロレスの興行は素敵な愛に溢れている。

 そして、観客もまた、その興行の一員でもあります。だから、場外乱闘が始まったら、逃げる準備をしましょう。大きな荷物はなるべく会場に持ち込まないように。どうしても持ち込まなければいけない場合は、いつでも逃げられるように抱えていなくてはいけません。これは、プロレス観戦における、最低限のルールなのです。

【みやび「(略)ヒデオ・サイトーは1日1時間までっていつも言ってるだろ!?」】

 ヒデオ・サイトーというのは、新日本プロレスの平沢光秀選手がちょっと前まで名乗っていた選手名です。プエルトリコで修行して、帰ってきたら、そんな選手になってしまっていました。プエルトリコの亡霊に取り憑かれていたのが原因だそうですが、過去の記憶を失ってしまい、常に心神喪失状態の選手でした。こういうことは、プロレスにおいてたまに起こります。誰一人として望んでいないことが起こり得るジャンル、それがプロレスなのです。現在は、ヒデオ・サイトー選手はこの世界には存在しておらず、キャプテン・ニュージャパンというヒーローとしてリングに上がっています。それはそれで、色々とあれなのですが。

源五郎丸姉妹の下の名前について】

 「みっつ数えろ」の主要メンバー4人の下の名前は、メロン記念日という伝説のロックンロールアイドルグループのメンバーの名前から取られています。源五郎丸めぐみという名前は、メロン記念日のメルヘン担当、村田めぐみさんから。彼女には二人の姉がいるのだろうと思ったとき、その姉の名前を想像してみたわけですが、プロレス界におけるめぐみと言えば、工藤めぐみです。くどめです。彼女の同期にはバイソン木村アジャ・コング前田薫選手がいます。生まれ順に直すと、工藤めぐみが丁度三番目。

 なので長女は、一番年上のバイソン木村選手の下の名前である伸子、次女は二番目に年上である前田薫選手の下の名前である薫、と命名してみました。じゃあ、アジャはどうなんだ? アジャの本名は宍戸江利花。江利花という登場人物は今度出てくる可能性があるのか? ぼくは知りません。でもまあ、源五郎丸一ぐらいの人物であれば、お妾さんに子どもを産まれてたりしてもおかしくはない。江利花という名前の、源五郎丸の血筋をひく登場人物が今後現れるかどうかは、色々と想像しながらお待ちください。ぼくが忘れていなければ、たぶんどこかで出てくるんじゃないかと思います。

 それではまた次回。まだ「水道橋博士のメルマ旬報」読んでおられない方で興味もっていただいたなら、ご購読はどうぞこちらのページから。以上、「みっつ数えろ」第七戦の、お粗末ながら解説でした。エレガントに、さよなら。