ハロッスル第1回

第一回「カーニバルの幕開け」の巻

 時は2005年11月。場所は……いや、言わずにおこう。これから始まる壮大な物語にとって、どこか特定の場所はちっぽけすぎる。言わばそこは、地球であった。つんく♂という稀代のトンチキプロデューサーの号令により、多くの記者が集められていたのである。すでに会見予定時刻から15分ほどが過ぎていた。記者たちが徐々にいらだつ顔を見せはじめる中、ドアが派手な音を立てた。そこに突っ立っていたのは……まことである。まことは汗を吹きながら、慌てたようにマイクを取った。

「えーっ……(キーン!というマイクの音)……失礼しました。えーっ、まことです。本日はお忙しい中お集りいただき、まことにありがとうございます。それでは本日、皆様に重大な発表をいたします、つんく♂でございます」

 パラパラと拍手の中、会見場の正面に座るつんく♂であった。ニヤニヤと悪戯っ子のような笑み。まさに先日出版されたセクシー写真集で彼が見せたそれであった! つんく♂はそのいらだたしい笑みを崩さぬまま、おもむろにマイクを掴んだのである!

「よいっす。つんく♂や。お疲れさん。ま、皆さん疲れてるようやさかい、単刀直入に言うわ。な。その方がええやろ? タイム・イズ・マネー、T.I.Mや。ほな、言うわ。記者さん、ここだけメモ取っといてや。まあ大したことやないけど、ね」

 そしてつんく♂は唇を歪め、高らかに宣言したのであった!

「えー……本日をもちましてぇ! ハロー!プロジェクトは、プロレス団体になりました!」

 つんく♂が人間として頭がおかしいことは、彼の書いた歌詞からも明らかである。30を過ぎた素面の男として、「小遣いUp大作戦」のような歌詞を書けるものが読者諸兄の中にいるだろうか? いや! よそう……。ともかくつんく♂は奇人である! 記者たちはつんく♂の言葉を聞き、狐につままれたような顔でただたたずむだけであった……。

 「なんやなんや、素っ頓狂な顔して(笑) そない悩むことないがな。もうな、飽きてもうたんやわし、アイドルとか! これからはプロレスの時代や! そやろ!」

 会場に沈黙が流れ、そして一人の勇気ある記者がおずおずと手を上げてつんく♂に声をかけた。

 「すみません、東京日日スポーツの山井と申しますが。そのご発言は、事実ととらえてよろしいんでしょうか? ということはつまり、ハロー!プロジェクトがひとつの団体として、女子プロレスに参戦するということですか?」

 するとつんく♂は高らかに笑い、そして答えた。

 「いやいや、そうやない。ハローもな、もう仰山メンバー抱えて、ゆうたら大所帯や。せやからな、ワシの独断と偏見で、いくつかの団体に分けさせてもろたわ。各団体の路線や興業方式は、それぞれの団体のリーダーに任せる。ちゅうわけで、もう早速紹介させてもらうわ。今回各団体のリーダーをつとめてもらうのは、この6名や」

 記者たちがつばを飲んだ! そしてつんく♂の口から、今後それぞれが団体を率いることになる6名が発表されたのであった!

 「まずは娘。をまとめる元気印、吉澤ひとみ! そして平成が生んだ大スター、松浦亜弥! 美しき生きる伝説、後藤真希! 死に急ぐ行き遅れ、中澤裕子! 永遠の原石、柴田あゆみ! ジ・オリジナル、安倍なつみ! 以上6名や〜〜〜ッ!!!」

 そして会場のドアが再び開いた。そこには6名の影が伸びていたのだった……。(続く)