ネットプロレス大賞2010投票

 ネットプロレス大賞への投票、今年が初めてです。というか、自分がちゃんとプロレスのファンになったのは2010年からだという気がしています。未だにプロレスファンを自称するのに照れや気恥ずかしさはありますが「プロレス好き?」って言われたら、頬をほんのり赤く染めながら首を縦に振るぐらいには成長できました。DDT周辺を中心に、今年は31興行を生観戦(北海道、五稜郭二日間を6興行として換算)。プロレスは生で観戦しないと分からないものがあまりにも多すぎるという考え方なので、全ての賞に関して生観戦を前提としています、あしからず。
 というわけで、各賞1位から3位まで、こんな感じとなりました。

MVP
 1位 マッスル坂井
 2位 該当者なし
 3位 該当者なし

 いきなり変化球っぽい回答で恐縮ですが、かなり長いこと悩んだあげく、自分にはこうとしか答えることができません。マッスル坂井という稀代の才能、同世代のちょっと下の人間として憧れて羨んで嫉妬して、ああこういう人を天才と言うんだなと生まれて初めて思えた人が、20年後の再会を約束して引退する。そんなことが起こった2010年に、MVPの欄にはぼくはマッスル坂井の名前しか書くことができないし、そういう風にぼくはマッスルとマッスル坂井が好きでした。そして今でも、ぼくはマッスルとマッスル坂井を、そういう風に好きなんです。
 マッスル坂井がいなかったら今のぼくはいないし、これから先のぼくもきっとずっと、マッスル坂井が形作ったものであり続けるでしょう。ぼくはマッスル坂井が引退してからも、マッスル坂井の数多くの作品の一つですと、冗談抜きにそう思っています。プロレスの可能性を気付かせてくれた、ジャンル問わずあまりにも特別な人でした。マッスル坂井と同じ時代に生まれてきて良かったと、心からそう言える。マッスル坂井は、ぼくのプロレス人生での、永遠のMVPです。
 思い出を語り出すときりがないけど、一番印象的だったのは2010年の夏のこと。エビスコ酒場に行ったらたまたまそこにマッスル坂井がいて、マッスル坂井が先に店を出たあとTwitterで「君のぶんの勘定も済ませておいたよ」ってリプライを送ってもらいまして、うわあやっぱりプロレスラーってかっこいいなあ、と感激した思い出です。そんでお店出るとき、当たり前のように飲み代請求されました。なに微妙にリアルな嘘かっこよくついとんねん! ちょっと信じるやろ! 本当、プロレスラーって人種は信用できない。20年後に再会しようとか美談にしてるけど、いつケロッとした顔で帰ってきたっておかしくないので、まったくもってプロレスラーは油断ならないと思います。

最優秀試合
 1位 11月28日 後楽園ホール KO-D無差別級選手権:佐藤光留vsディック東郷
 2位 11月14日 大阪府立第2体育会館 KO-D無差別級選手権:HARASHIMAvs佐藤光留
 3位 12月25日 後楽園ホール CHAMPION OF STRONGEST-K選手権試合:火野裕士vs滝澤大志
 次点 9月26日 後楽園ホール 高木三四郎vsマッスル坂井

 両国で関本を下したHARASHIMAが大阪で佐藤光留に破れた試合が第2位、その佐藤光留ディック東郷に敗北した試合が自分の2010年ベスト。HARASHIMAが「エースとして破れるチャンピオンの強さ」を見せつけてくれた2週間後、レジェンドレスラーの強さを最大限引き出した佐藤光留。この3試合を全て生で観ることができて本当に良かった。プロレスにしか創り出せない感動が確かにそこにあった。あの11月28日があったからこそ、佐藤光留を全力でこれからも応援できるし、愛することが許されたという感覚がある。愛したいものを存分に愛させてくれるというのが、プロレスの素晴らしいところだと思います。
 第3位は、二人の男のチョップの打ち合いだけで30分弱のエンタテインメントを成立させる、という信じがたい祭り。これもまたプロレスでしか許されない奇行だった。普段観られないものが観られるという、プロレスの根源の魅力を思い出させてくれたという感謝の意味を込めて第3位に選ばせていただきました。
 次点の高木三四郎vsマッスル坂井は、おおいに笑っておおいに泣かされた。MVPにマッスル坂井選んでるので次点にしてるけど、素晴らしかったです。

新人賞
 1位 佐藤光留
 2位 帯広さやか
 3位 怪人ハブ男
 次点 山口日昇

 プロレス転向3年以内というところで、第1位には佐藤光留を推したい。まさしく「新人」らしい活躍のやり方だったとも思うので。自分の中で、佐藤光留を一度新人賞にしておかないと、来年以降MVPに置けない感じがなんとなくあったりします。リング上に全員集合したときとかに一人だけ群れない感じとかすごい好き。非常に2010年代的なプロレスラーだと思います。
 第2位は、フィニッシュといいあり得ないロープワークといい、プロレスを根っこから覆す可能性のある帯広さやか。天下一ジュニアで鮮烈な印象を残した怪人ハブ男も、新人賞としてはふさわしいんじゃないかと思います。「亜留魔下首領(アルマゲドン)という技を生で観たい」という気持ちだけで興行を観に行くというのも、そうある経験ではない。
 次点には、ハッスル復活でプロレスデビューを果たした山口日昇。誰が何と言おうと、あの試合は良かった!

最優秀タッグチーム
 1位 飯伏幸太ケニー・オメガ
 2位 旭志織大石真翔
 3位 高木三四郎澤宗紀

 第1位は、やはり今年はここしか考えられない。2011年は二人とも大きなケガをしないことだけを願っています。
 第2位は、12月25日のK-DOJO後楽園の試合が衝撃的だったので。4WAYタッグマッチだったんだけど、この試合は「お前ら、マジか!」って言うぐらい作品として完璧な芸術だった。選手8名が入り乱れての、かわして誤爆して合体技出してカット入って、ってそのスピード感と完成度たるや言葉もない。その試合で勝った二人が第2位。あとこの二人は表情が素晴らしい!
 第3位は、プロレスバカの二人。いつもワクワクさせてくれたので、ここがタッグベルトを落とした瞬間はちょっと寂しかったです。

最優秀興行
 1位 5月4日 マッスルハウス9・後楽園ホール(リングオブコント)
 2位 10月3日 ユニオンプロレス新宿FACEマッスル坂井参戦、チェリー米山に挑戦表明)
 3位 12月26日 DDT後楽園ホール(本多vsGENTARO、ディーノvs大石)

 解散興行である「マッスルハウス10」も当然良かったんだけど、自分としてはその前の「ハウス9」を断然推したい。マッスルというかマッスル坂井を他人事じゃなくずっと見続けてきた者として、あの復活劇は本当に感激した。自らの才能に自家中毒を起こしまくって、自主興行やら八百長☆野郎やら最後にボール投げつけるやつやら文句のつけようのないクリエイター思春期を悪い意味でこじらせたマッスル坂井が、666とのディナーショーで吹っ切れて、その上であれだけ笑える興行を、自らの手で「ハウス4」を超える興行を提供した意義は本当に大きいと思う。あれがなかったら「ハウス10」も安心して観ることはできなかっただろう。20年後の再会を約束するのも素敵だけど、「ハウス9」でちゃんと戻ってきてくれたマッスル坂井は、それ以上に素敵だと思います。
 そんなマッスル坂井が置き土産的に参戦した10月3日のユニオンプロレスは、まさしく神懸かっていた興行。自分の言葉を持つとプロレスラーは一気に人が変わるものだけど、それが同時多発的に起きたのがこの興行だったのではないか。この日を境に、ユニオンプロレスは明らかに変わった。
 第3位は、両国も大阪府立第二も行ってるけど、DDTの2010年ベスト興行は年末の後楽園だったと思う。マッスル坂井が去り、高木三四郎がユニオンへ移籍し、さらにディック東郷がケガのため急きょ欠場という中、DDT全員でピンチをチャンスに変えた興行だった。第一試合から全員の気持ちが伝わってきた感じがあった。逆境でこそ輝くという、DDT、というかプロレスの神髄が確かにそこにあったように思う。

最優秀団体
 1位 新日本プロレスリング
 2位 DDTプロレスリング
 3位 ユニオンプロレス
 次点 アイスリボン

 これだけマッスルだのDDTだの言っておきながら、最優秀団体は新日本プロレスリング。もちろんここ最近の試合内容が素晴らしいというのはさることながら、USTREAMを活用した記者会見、Twitterでのガオのやり取り、3Dでの劇場公開など、王者としてのチャレンジにプロの本気を見た。虚実の是非を問わぬというプロレスならではのやり方というか。いま現在、新日本プロレスがほぼ唯一のメジャー団体であるというのは、プロレスファンとして非常に幸運なことだと思う。
 あとアイスリボンも本当は入れたかったんですが、ここに入れるほど観れてないというか、ここに入れちゃうとちゃんと観てる人に失礼なんじゃないかという思いがあったので次点です。

最優秀マスメディア賞
 1位 USTREAM19時女子プロレス
 2位 ラジオ日本「真夜中のハーリー&レイス」
 3位 書籍「僕たち、プロレスの味方です」ユリオカ超特Qケンドーコバヤシ

 やっぱり観客不在でUSTREAMだけでプロレス興行をやる、っていうのは素晴らしいですよ。しかも早かった。新しいものには取り敢えず手をつけておく、っていうのは実にプロレス的なやり口だと思う。あと19時女子のアカウントがよく分からない理由で運営から削除されちゃったときにさくらえみが「困ってるけどちょっとおいしいとも思っています」的なツイートをしていて、ああこの人やっぱすげえな、と思ったのが印象的。逆境をおいしいと思えるかどうかが、人間の質を決めるんだなという。
 第2位は清野茂樹アナのラジオ番組。マッスル坂井山口日昇への電話)、ケンドー・カシン、鶴見亜門さんなど、時を踏まえたゲストの人選が抜群! この番組を限られた人しか聴けてないのはプロレス界にとって大いなる損失であると思うと同時に、一日でも早く書籍化が実現することを願っています。勝手に。
 第3位は、あらゆる意味で素晴らしかった。プロレスファンならずとも、エンタメ全般に関して示唆に富む内容。良かった頃の紙プロにあったものが、この本には詰まってました。

総括

 2010年、ずっとプロレスは面白かったです。ありとあらゆる全てのプロレスラーとプロレス関係者に感謝を。2011年も宜しくお願い致します。